白帝社 迎仏鳳儀の歌


迎仏鳳儀の歌

元の中国支配とチベット仏教

 著者:
 乙坂智子 著 
 サイズ/ISBNコード:
  A5判・640p/978-4-86398-278-9
 定価:
  本体12000円+税
数量:
 説明

◆ 元のモンゴル人王侯たちは、なぜあれほどまでにチベット仏教を尊奉したのか。従来これについては、チベット地域掌握という側面からの議論が多くおこなわれてきた。しかし元は、中国域内においてもチベット仏教奉戴事業を盛大に展開している。では、これは対チベット政策から派生した単なる「溺仏」なのであろうか。本書はこの問題を、元の中国支配、なかでも漢民族社会に対する政治的圧力という視点から考察する。

【主な目次】

緒言―永楽五年二月、霊谷寺普度大斎 
序章 課題の設定 第一節 先行する諸議論/第二節 課題

第一部 チベット仏教の導入―「崇奉」という認識の成立とその政治的機能
 第一章 元初におけるチベット仏教導入と漢民族社会 序言/第一節 帝師位の設定と漢民族社会/第二節 帝師「崇奉」という判断の根拠と判断主体/結語
 第二章 儒教とチベット仏教 序言/第一節 儒教的観念と帝師/第二節 儒教儀礼とチベット仏教奉戴/第三節 チベット仏教導入の政治的機能―儒仏の位相/結語

第二部 否定的反応
 第一章 反発:楊璉真伽の発陵をめぐる漢文文書 序言/第一節 それぞれの“事実”―君主は発陵を承認していたか/第二節 「異端」―仏僧という認識枠の適用/第三節 奇跡/結語
 第二章 批判:元の崇仏に対する漢民族官員の諫奏―「聖」と「異端」の刻印 序言/第一節 李元礼―中央官僚の諫奏/第二節 張養浩・張珪・蘇天爵―その後の中央官僚たち/第三節 鄭介夫―中央政界外部からの諫奏/第四節 反響/結語
 第三章 否定:「元之天下、半亡於僧」の原像―国家仏事に関する元代漢民族史官の記事採録様態 序言/第一節 課題の設定/第二節 否定―仏事抑制記事/第三節 告発―仏事実施記事/結語―「元之天下、半亡於僧」

第三部 受容的反応
 第一章 協調:奇跡譚の生成―仁宗期漢文文書におけるチベット仏教僧の造形 序言/第一節 延祐五年「護国寺碑」/第二節 仁宗期におけるチベット仏教宣揚/第三節 儒家知識人に課されたチベット仏教僧への言及/結語
 第二章 止揚:呉澄撰パクパ帝師殿碑文二篇―反仏教的「真儒」のチベット仏教僧顕彰文 序言/第一節 呉澄の反仏教的言動/第二節 呉澄碑文とその構成/第三節 用語・叙述の特質/第四節 話題の設定/第五節 儒仏の位相―チベット仏教に対する否定と受容/第六節 撫州路帝師殿/第七節 南安路帝師殿/結語
 第三章 称揚:聖世呈祥の証言―大都の游皇城 序言/第一節 都市の記憶―遊皇城の源流/第二節 行列の構成/第三節 巡行ルート/第四節 「与民同楽」「混一華夷」―描き出された観念/第五節 游皇城を題材とする呈祥詩文/第六節 皇帝への歓呼―民の悦服・天の承認/第七節 政権不安定期と呈祥詩文―游皇城の機能/結語―「万邦稽首、称天子聖」

結章 第一節 第一の課題―認識の主体・その認識を表明させた要因/第二節 第二の課題―元の中国支配における政治的機能

文献表 後記 索引 Summary